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唄われよ わしゃ囃す

昨夜、PCで越中おわら風の盆の謡い?をPCで聴いていて、ヘッドフォンを取ると未だ聞こえる。おかしいなとついていたTVを見ると、「風の盆が~」とか言っていた。
そんな時期なんですね。

三千世界の 松の木ァ 枯れても あんたと添わなきゃ 娑婆に出た甲斐がない

とか聴きながら、暗闇の路地で手を繋いで歩く榎と関を軽く妄想。通りにはか細い燈が見えていて、哀愁のある胡弓と三味線が聞こえている。

浮いたか瓢箪 軽そに流るる 行きゃ知らねど あの身になりたや

自分が既婚者であるとか、互いが男であるとかそれを辛いとか思ったことは無いしそれ以上に考えないようにしているが、其処から出られたらどれだけ楽なのかと少しだけ考えてみる。
榎木津の手が力が籠もる。
関口は不図、己の横を見上げる。
榎木津は涼しげな顔をしている。
けれど彼の首筋に薄らと光るものがあって、それが遠く遠く離れていく通りの燈が映っているのだと気がつき、榎木津の首筋に僅かに汗が浮いていることを知る。
もしかして。
もしかして此の人も同じことを思ったのだろうか。
関口の目線に気付いたのか、榎木津が頸を廻らした。
いつもより眸子が穏やかだ。
関口は、繋いだ榎木津の手をぐっと引くと、歩みが弱まった。それまでもとてもゆっくりゆっくり歩いていたので、其処停止した。関口は草履の踵と己の顎を上げ、目を閉じた。

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