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水の生き物

幾多の泡沫に包まれて圧迫するその重さに奈落へ陥ってゆくのをまるで他人事のように眺めていた。肺腑はやがて圧し潰され血の巡りと血液に乗る酸素は供給されず、体内の活動が停止するのだろう。肉は啄まれ藻屑となるのだ。
嗚呼、蕩けるようだ。
眠りが襲っている。そして、目の前が黒色に染まった。

雲の波頭が黄金に染まり、その裳裾は薄紅色に擦れていた。夕暮れの甚と薄き西の蒼穹に。

耳に響く漣の、途切れを知らず太古から繰り返される運動が、ずっと聞こえていた。俄かに浮上する意識のずっとずっと向こうで長い時間聞いていたはずだ。
水際に半身を浸す。耳朶に水が掛るか掛らないかの絶妙な距離で。
白い臑があった。
彼の体毛はその色素がとても薄くて、眩さの中で輝いてみていた。
「眼が醒めたかい?」
そう問う声音には何も潜んでいない。

けれど、とても傷つけたような気がした。確信に近いほどに。

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榎木津と溺れた関口。状況が書きたかっただけで意味は無い。泳げる人でも溺れるよね。そして溺れた関口を助けるのは自分の役目なんだと、榎さんは思っていると思うよ。
関口は水の生き物だと思っている。

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