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贋作阡夜壱夜物騙


「フカツさん!」
絨毯も布かれない大理石の上を跫を編み黄金細工の鼻緒が着いた履物が音を発てて迫ってきていた。
振り向けば、其処にいるのは勿論サワキタであった。早々と軍装も解いた姿に思わずフカツの眉間が寄った。
「良かった未だ
外廷ビルンにいて、」
「……大勝利おめでとう…ピョン」
その言葉に徐にサワキタの腕が伸びる。
その両を見つつ、フカツは少し息を落とした。
互いの頸を擦り合わせて抱擁し、サワキタは静かに頸筋に口付けを落とした。
そもそもサンノーに男同士の
お触りスキンシップ過多の挨拶ではない。他者とは握手が基本だ。精精父系の青年同士は唇に軽く接吻や、年配や別の父系は鼻を撫でる。老人に対し、若人は鼻に接吻をするくらいである。
他人と見境無くそんな親しい挨拶は存在しない。
勿論例外はある。
旅から無事に戻ってきた者を迎える時には、他人であろうとも頸部と頸部とを合わせて抱擁しあって首にキスをしてもよいことになっていた。
然し基本的に肌と肌の触れ合いの習慣が無い国に、近親者ならば兎も角、人によっては不快に近い感情を抱く。
諾々とそれを受け止めている。此の王朝の
宰相閣下ワジールパシャが。
殆ど此の国で比類無い権勢を誇る権力者が腕を垂れて為されるが儘の様は中々奇妙なものがあった。
一分の隙も無い物腰。
それは到底文官の物ではないだろう。
「サーワーキーター」恨めしいと云った声が聞こえ、フカツは目線を上げた。サワキタの背後に現れたのは、
総督アミールであった。
フカツに張り付いた儘、サワキタは恐る恐る頸を背後へ廻らせた。
丸いゴリラのような顔。
アミールパシャ。カワタマサシである。
笑んだ額に筋が浮いている。
「スルタンへの報告無しにワジールに走る奴が居るか!」
「か…カワっさん…」
「好い加減離れるピョン」
フカツの腕が動いて、サワキタの額を押した。
「此れが次代だと思うと…俺は呆れるピョン」
「そう!そうだ!その時は是非俺の
後宮ハレムに来て下さいね。是非是非絶対!」
サワキタは両手で、戦場から帰ってきたであろうに紅玉の着いた指輪をする手で、フカツの磐々とした右手を包んだ。
「莫迦野郎、男はハレムに入れねえって何度言えば解んだあ!」
カワタはその場でサワキタに四文字固めを掛け、ぐったりとさせると、その頸根を摘んで、毛足の長い幾何学模様をした絨毯の上を引きづって往く。
「カワタ、」
「なんだ?」
「大勝、おめでとうピョン」
「おう、」
その顔を緩ませた。



アラビアン大好き。

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無題

お邪魔します。ささきと申します。
コメント書き込むのは初めてですが、よく寄らせて頂いています。
京極目当てですが山王が一寸懐かしかったです。アラビア物も認識間違っているかもしれませんが好きです、男性の服装も独特の色っぽさがありますよね。
いつも楽しませて頂いています。長々と失礼しました、又寄らせて頂きます。

京極試し書きが消えてショック

  • 恵明
  • 2008/04/11(Fri)21:29:11
  • 編集
ささきさま。ありがとうございます。このメモ初めてのコメントです!
山王に反応が…!すっごい珍しいこと(人?)に心が踊ってます。いいですよね、あのアラビアンな男の人の恰好。色っぽい!

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