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平成拾漆年、姑獲鳥の夏

映画感想です。観賞した当時書いたものが出てきたので。

当時の文章そのままです。
以下のリンクからどうぞ。
因みに私は此の後二回映画を見に行きました。魍魎は一回で懲りた…。

追記~
kyougokにE/S「譲り葉」追加。探し物の途中にみつけました。読めばわかりますが、此れは六つのグノシエンヌの原型です。もう一つ、Sudden I seeと言うもがあるが。

姑獲鳥の夏
 

昭和27年、夏――――――
 

産の上にて
身罷りたりし女
其の執心このものと為れり
腰より下は血に染みて
其の声
をばれうをばれう
と鳴くと申しならわせり
百物語評判
 

兎角、『姑獲鳥』に関する思い入れは強い。
或る夏に京極だけで過ごしたことがある。『姑獲鳥』は素晴らしかった。そして京極堂が言うところの「粘膜のような関口の感性」に浸りきった夏だった。
酷く暑い夏で、冷房も入れず、怠惰にソファの横に京極作品を積み上げて、午睡と読書を交互に為していたあの一ヶ月。
彼の持つ凡てに魅せられた。
それは鬱の様子であったり、彼の口調や発言であったり、脆弱な精神であったり、彼の友たちであったり、彼の過去に犯した罪であったり。
凡てに眩惑された。
あれから長い月日が流れて映画化の話を聞いたときに「無茶だ」と思った。
それは勿論、あの特殊な姑獲鳥の内容に関することであったし、そして半分以上は映像化して幻想を私の中にある彼らの像を壊して欲しくないと言う願望でもあった。
 

そして昨日友人と鑑賞に行ってきた。
 

一言で表すならば「悪くない」。
そう、予想に反して悪くなかった。
私が好きな空気が映像の中に溢れていたからだ。注意すべきことは、それが「姑獲鳥に相応しい」では無く、「私が好きだ」と言う極々主観であると言うことだ。
主観ほど大切なものはない、は私の持論だ。客観ほど曖昧なものはないからだ。
今回初めて原作と映画は別物と云うことを理解できた気がする。
原作に漂っていた濃密な『京関』は此処では『淡く』だが慥かに存在していた。
短期間の同居の蚊帳の中で何も起こらないなど有り得ないだろう。
来ている客人にまで京極は関口自慢をするし。
永瀬は好きな俳優だが、彼の開襟姿は好ましかった。眼鏡は原作では言及されていないが、それは許容範囲内である。別の思考に発展して行き反応が少し鈍い処は正しく関口であったし、敦子の作った夕餉の最中で会話の最中に「ごふっ」と吹く辺りで、此れは正しく関口なんだ、と思い知らされた。男の人で演じられた関口は関口としての血肉を持っていた。
京極堂の舖や住居は庭が余りにも少なくて、違うと思ったがそれはパンフレットを読めば解決された。まあ眩暈坂の狭さと距離の短さには難はある。そして立地条件も。京極堂の横には貧弱な竹藪と蕎麦屋があるはずなのだが、映画では無い事にされていた。
京極は滔滔とした長広舌、関口に一声も返させない長い科白、そして長めの髪、白い装束。
堤の京極もまた京極だった。思えば未だ三十歳そこそこであり、そんな若造が重々しい感じがあっても困る。だから堤のあれで、良いのだ。
敦子は些か気が強すぎて「敦っちゃん」では無かった。
宮迫の背は低かったし、榎木津はまんま上田次郎で髭のあるむさ苦しい容貌に少し辟易した。(髭は好きだが榎木津には些か違和感)しかし阿部に米軍のパイロットの姿は似合っていた。
猫目洞のお潤さんは想像通りのお潤さんでこれには文句のつけようもない。篠原涼子の雪絵さんも中々。
キチンと咀嚼されたストーリーに仕上がっていた。
言う為れば、姑獲鳥のダイジェスト版である。
始まりの関口家ではまるで『川赤子』から始まっているようだったし、京極の処に多々良先生と思しき男がいるのも、猫目洞が姑獲鳥に出てきているのも、好感が持てた。
所々に月齢が出てくるのは小説帝都物語を読んでいる気分だった。パンフレットを見たら監督は映画帝都物語を撮った人だった。
最大の難点が一つ。
私は姑獲鳥の夏を雨小説(雨愛好家ですから)として読んでいる。
暑さと雨のコントラストだと。
原作では要所要所で雨は素晴らしい効果を齎していたし、雨の匂いがしていた。
だのに、映画では最後は火とまるで対照的な情景で終ってしまった。
此れも鑑賞後パンフレットを読んで解決した。
 

あとショックだったのは青木が堀部であったこと。何処がこけしなのだろう…(鬱)
石榴は洒落にならんほど可愛かった。
堤が抱きかかえたところなど、PCの壁紙にしたいくらいだ。
 

なんだか一日経っても能く解らない。
でも不快感も無くて充足感があるのだから、それだけ面白かったって言うことか?
二度目を見ないとなんともいえないが。
 

と云うわけで
友人と二本立てで映画を見た。どちらも邦画。「電車男」と「姑獲鳥の夏」。
山田孝之に仕様の無いほど苛々し、中谷さんは美しかった。あの苛々は「大振り」以来だ。
本を三冊購入。
窶れ果てた友人に少しビビった。そして金を返し忘れたN雲くん。ごめん。(合掌)

 


私、どんだけ関口が好きなのか…!(2009年現在)

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