瀑布─────
白い飛沫を上げて、滔滔と弾け落ちるその水の塊を見上げる深津の横顔を沢北は熟視していた。どういった経緯で此処に居るのか沢北はその横顔を見ながらただ只管記憶をなぞっていた。
まるで自らを慰さめるが如く記憶を幾たびも幾たびもなぞる。
そう────此処へ来たのは、他ならぬ深津の誘いだったのだ。
北へ向かう夏の電車は冷房なども無く、先ず窓を開けることから始まった。
冷房完備は今夏中だとの通知が駅の掲示板にあったが、今は未だ行われていないようだ。暑い、と互いの口から言葉が漏れた。
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