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加納祐介が好きです。

高村薫好きです!
合田シリーズは誰が何と言おうと合田×加納は譲れない。そう私はマイノリティ。

で以下は嘗て、自分の慰みに書いていたものです。唐突に始まって、唐突に終わる。何故なら自分の楽しいとこだけを書いていたから。
合田加納なんだけど、オリジナルの人と加納さんが絡んでます。

同志の人だけ見てください。
以下のリンクから~



「久しぶりだな、」
背後から声が掛って、加納は振り返った。
「高倉!」
懐かしさに声が上がった。
「確か…大阪だった筈じゃ…あ、東京に戻ったのか?」
「そう。辞令が出てな」
日比谷公園を突っ切ろうとした処、加納が見えたのだと言う。
高倉の目が加納からその背後に向けられた。
「ああ。…俺の義弟の合田だ。雄一郎、検事の高倉だ」
初めまして、と呟くように言って合田は頭を下げた。その顔を不躾に高倉は凝視した。
「あんたが加納の執着する義弟さんか」
顔を寄せてまじまじと凝視する高倉と不快感を露にする合田の間で加納はちょっと戸惑った。そしてそれ以上高倉が余計なことを言い出す前に話題を変えたかった。
「高倉、昼食は未だか?俺たち此れから昼食なんだ。どうだ一緒に、」
背後の合田をちらりと見ると、あからさまに不機嫌だった。
「いいのか?」
「久しぶりに会ったんだし。なぁ雄一郎?」
ただ合田は頷いただけだった。何処か憮然としていた。

会話の中心は加納で主に高倉が話した。合田は仏頂面で食事をすすめるだけだった。元々饒舌ではない上に、初対面の人物が一緒ならばそれも当然だろう。加納は食後の珈琲を口に運びながらそう思った。
加納の胸が物質的に震え、加納は上着から携帯を取り出した。
「あ、」
「どうした?」
問うたのは合田だ。
「あ…悪い。網野くんからだ」
網野とは加納付の事務次官だと以前に聞いたことがあった。
「ちょっと」
と言って席を外した。
「…悪かったね」
高倉が合田に言った。
「加納と二人の食事を邪魔して。然し…相変わらずだな。加納も。人の思惑を斟酌しない」
合田は徐に息を吐いた。あの無礼な目線は無意識ではなかったと言うことだった。高倉は憮然とした合田を見やって呟いた。
「どうやら加納も報われたらしいな」
「あんた…何が言いたい」
「いやいや。俺と加納は司法研修所時代からの付き合いで…そうだな…彼此十五年か。時間だけなら君とそう変わらないと思わないか」
眉間の皺を深くする。
「語り草だよ、あの、優秀さは。情報に左右されない冷徹さ、敗訴を恐れない柔軟性。おまけにあの顔と来てる。あの頃から加納は兎角人気があった。男女問わず。殆どアイドルだな、ありゃ。休日も引っ張り凧。お陰で紳士協定が出来たほどだ。でもどういう訳か、特定の誰かと付き合うってことはしなかった。その内色んな憶測が飛び交って、奴には想う人間がいるってことが発覚したときの俺たちを見せたかったな。普段があれだけ完璧だと反対にちょっと素を覗かせただけで周囲はピンとくるもんだ」
横目で合田を見る。
「だから俺は直ぐに相手が奴の義弟ってことはしれたよ。俺は当時一番奴の傍に居たからな」
合田の目が射るように高倉を見た。テーブルに肘を着きにやりと笑っていた。
「どういう意味や」
「感情的になるとその関西言葉が口をつくんだな。成る程、聞かされてた通りだ」
ついと合田が目線をそらすと、気が付く。未だ、だと。
「其処で物は相談なんだが…」
言葉を一旦区切り、不適に笑った。
「加納を譲ってくれないか」

 アパートを訪れると合田が出迎え、加納は笑んでスコッチを見せた。
「貰い物だが、」
上着を脱ぎネクタイと取ると、加納は漸く襯衣の第一釦を外しを寛がせた。
合田は口を開かず、不機嫌さを撒き散らすとまでは行かないものの漂わせていた。
何か合田が不機嫌になることをしたかと、思い巡らせて見たがどうにも思い当たらなかった。昼食の約束に人を割り込ませただけだ。それにしても此処まで不機嫌になる謂れは無い。
つと合田は息を吐く。
「雄一郎?」
「昼間の男、何なんや?」
矢張り高倉のことか、と加納は胸を撫で下ろす。高倉であれば今や何の関係も無い。すぐに合田の機嫌も優れようと言うものだ。
「高倉か?研修所時代の友人だよ。検事だ。優秀な男だよ」
「あんたの何なんや」
鼓動が強く打たれた。
「何…言ってるんだ?」
「寝たのか?」
「…雄一郎?」
一寸思案して息を吐いた。
「昼間、俺が席を外したとき、何か言ったのか?高倉は」
「………あんたを譲れと言った………」
胸が灼かれた。
「あんたの何なんや。あの男と寝たのか?」
「雄一郎。からかわれたんだよ、君は。第一高倉は結婚している」
「指輪もしてへんかったぞ」
「しない夫婦もあるだろう?第一君だってしてなかったじゃないか」
「俺が聞きたいのはそういうことや無い。あんたと高倉の関係だ」
胸が疼いた。言わなくては成らないのか。…しかし此処で迂闊に虚偽を吐くもの憚られた。合田は本人の自覚云々はどうであれ、その本分は刑事だ。いずれ嘘もしれると言うものだ。
「…もう…今はもう、何でもない。ただの友人だ」
「寝たのか?」
加納は自分のグラスを持つ手を見た。指先が僅かに震えていた。
「…昔のことだ」
むっつりと合田は黙り込んだ。
「あのな…雄一郎。過去は過去だ。君だって結婚もすれば他の女性と恋愛だってしただろう?過去は過去だよ。俺と高倉は最早何でもない。君が何を怒るのか解らない」
「解らない、か」
「好い加減にしてくれ。からかわれたくらいで…」
「そうやない!」
遮るように合田は声を荒げた。
「あんたが…他の男に許して、俺には許さへん言うのが…」
我慢なら無いのだと言って、グラスのスコッチを呷った。
加納は眦を裂いて、やがて眉間を狭めた。
「雄一郎…もうそれは解決済みだろう?」
こつりと加納の指がテーブルを鳴らした。ずっと依然に幾時間もかけて話し合った懸案だった。それ以後二人はその決定事項に従って関係を続け深めてきたのだ。
「君とそういう関係を築くつもりはないよ。今まで通りで…いいんだ。無理はするな」
「俺に対しての欲望は無いのか、」
「雄一郎!」
加納が声を荒げる。顔が険しかった。やがて目を伏せた。
「そんなものだったら他で晴らす。君に向ける心算は無い」
「それはあの男と寝る言うことやな」
思わず顔を上げると強い目線にぶつかる。
「何を言うんだ」
「あの男と寝るのか、」
「辞めてくれ」
「他で晴らす言うことは、俺とは寝ないで、あの男と言うことやろ?」
胸に霜が降りるような合田の口調だった。

「高倉」
廊下で一際上背のある男を呼び止めた。にやりと人を食ったように笑うその顔は確信犯だった。
「聞いたか、義弟から」
「全く…。彼とのことは微妙なんだ。余り波風を立てるようなことを言わないでくれ」
「立ったのか。波風。そりゃ…重畳」
時代掛った口調をした。
「からかうな」
「否、本気だ」
「…妻帯者が何を言うんだ」
「先般離婚が成立したよ」
「え」
高倉が笑う。
「好い加減まぁこっちも忙しかったし、子供を作る余裕も無かったしな。仕様が無いだろうなぁ。向こうが男作ったからな。慰謝料は無し、だ。中々太っ腹な女だったな」
「…それは…」
「お決まりの台詞だったらいらないぞ。慰みだったら躰でしてくれ」
「高倉」
「久々にあんたの顔みたらむくむくと眠れるものが擡げてきた」
満面に笑う顔を見て、呆れたように加納は吐息した。
「相変わらずだな…君は。明け透けで、言葉も無い」
「諾か否かどっちだ、」
「解っていると思うが俺にはもうあれがいる」
何を言う、と言う顔で加納を覗き込む。
「昔もお前の中にはあの男が居たんだろう?変わりは無い。第一あの男とは、未だ、だろう?」
流石に少々狼狽したようだった。
「見てりゃ解るぞ」
そう言ってメモ用紙を加納に握らせた。去り際、耳許に口を寄せ、囁く。
「待ってる」

「なんでだ」
シャワーを浴び、衣服を身に着けた状態で戻ってきた加納に、高倉は問うた。依然高倉は敷布に躰を突っ込み枕に背を凭れていた。
「元々、告げる心算も無かったことだからだ。もうこれ以上は冗談じゃない」
「随分自虐的じゃないか」
「そんなんじゃない。…此れは保身だよ」
「は、その発言こそ自虐と言うんだ」
高倉の言に加納はそうなのかもしれない、と瞬間思えど、矢張り保身だと思う。結局は自分の身が一番大切なのだ、と。
「彼と寝たら…俺は狂う」
ソファに座って傍のネクタイを取りつつ、加納は呟いた。
「恐らく…常識も何も無くなるだろうな。俺も彼も破壊して、しつくして……。解らないな。もうその先が見えない。ただ解るのは最悪が待っているだけだと言うことだ」
目を閉じた。
「恐いのか?」
瞼を押し上げて加納は友人を見遣った。その顔は苦笑している。
「…恐いよ。…絶望的に恐い」

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