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夜歩く

拍手御礼掌編『一掴みの藁のウィリアム』(総一郎+ショタえのせき)をほんの少しだけ手直し。テディベアルの続編と言うか延長線上にある代物。あれ一応ハロウィンものなんだけど思えば『Ignis Fatuus』(青関)もなので二篇書いていたとは。あと一個書きたい。

以下、たぶん甘えたな有り得ない榎木津……

■ 夜の散歩に出た。白昼は幻惑を起こしつづけているような眩さと暑さだったが今の時分のは薄手の外套が必要な程だった。空は霽れていたが見上げても星の名前が解る関口ではない。ただ街中のビルヂングや家々の灯りは命火の様に思えた。
 隣を歩く榎木津は珍しく黙った儘で、電車がある内に帰らねば為らない関口も結局満足な会話の話題が無く黙った儘だ。元来口下手でもある。
酔漢が擦れ違い様関口の肩にぶつかりそうになって榎木津の手が伸び自らの方へ引き寄せ事なきを得た。思わず顔を見上げれば苦笑した榎木津が全く君は猿だなと鼻を摘まんだ。
 双人の夜の散歩は探偵社の最寄り駅が執着というのがお決まりだ。僅かに向かい合って別れを告げ身を翻そうとしたその須臾に榎木津の指が関口の左手中指の第一関節を捉えた。思わず振り返ると僅かに俯く榎木津の長い睫毛が外套に照らし出されていた。捉えた爪を榎木津の拇指の腹が撫でる。脳の新が揺さぶられ関口の心身はやおら震えた。榎木津が眼線を上げる。彼の明眸が欲に塗れて見えた。だけれどそれはきっと幻想で、欲に塗れているのは寧ろ己れなのだ。今夜は帰らないと電話を掛けるよ、関口は小さく呟いた。

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