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new rules

カミラカベロだとか言っておきながらデュアリパのnew rules。三つのルールを設定するところが可愛いなと思って。
以下、榎関で関口が未だ結婚する前で、神崎さんの存在が露呈した場合の掌話です。最近こんなのばかり書いているな……




 友達になっては駄目だと言う誰かの言葉を現つと聞いていなかったのかもしれない。

 榎木津とは長い関係を続けていた。美しい男だった。いつだって彼を瞥見するだに思考が止まる。耄と見蕩れ、その間抜けな顔を見て榎木津は大笑いをして意地悪なことを言うのだ。
榎木津は自分の恋愛遍歴を一度として関口に欠片とも見せたことは無かった。信頼されていなかったのか、親しい友とも思われていなかったのか。それは互いの間に関係を続ける程の情が有った為だと思いたいのは恐らくは的外れも良い処で、関口の思い上がりも甚だしいばかりだろう。
怪訝しくなりそうだった。
夜半に潺湲(せんかん)とする涕に忽然と意識が浮上し電話の脇で朝までを過ごすことが続いた。
電話をとってはいけない、そう忠告したのは誰だっただろう。
中禅寺でなければ、時折寄稿するカストリ雑誌の若い編集者であったかもしれない。
否、木場修であったのやも。
誰かが関口に言ったのだ。彼から離れたければ規則を作りそれを厳格に守るのだと。
榎木津の心の中には女性が一人いる。彼が愛しているのはその人物であり、関口ではない。尤も長い付き合いの中で愛し合っていると思えたことは一度も無い。それはあっては為らないことだ。仮令どれだけ関口は榎木津に熱を上げようと焦がれようと、斟酌せず稀に情けを旱魃の慈雨の如く一滴垂らすのが榎木津なのだ。
長く、それこそ学生時代から榎木津の傍に居たが、決まった女性の姿を言うものを殆ど見かけた事が無かった。すぐに別れてしまうので、巧妙に隠していたと言うのは中禅寺の談だが、要は信用が無かったと言うことではないのか。
けれども、榎木津の中に誰かがいるのならば、関口はもうこれ以上希んではいけないのだと豁然と了解した。
稀に、それこそ本当にごく僅かに榎木津に誘われることはあったが、大概は関口の欲望を榎木津が察してくれた。
関口が下宿にしている仕舞た屋の一軒家には電話があって、宵の頃に酔った榎木津から電話が掛かってくることが度々ある。それを待ち望んでいた。
けれど、電話をとってはいけない、頭の中で声がする。
広い三和土の玄関を見る。人影を探しているのが嫌になる。
彼を招き入れてはいけない。
そして、友達になってはいけないと――

 気が付くと神保町のビルの三階に立っていた。終電に乗って殆ど朦朧とした意識で其処にいた。
「関くん、どうした」
榎木津にしては優しい声を掛けて迎え入れてくれた。
「茶は出せないぞ。和寅がいないからね」
抱き寄せられて背中を優しく敲かれる。そして其儘二人で長椅子に傾れ込んだ。
なんで泣いているのかなぞ、一言も訊かなかった。
榎木津の長い指が関口の瞼に触れた。腫れて赤くなっている筈だ。大きな労働をしない柔らかな手が関口の顔面を撫で下ろした。
「丁寧に髭を当たったんだな」
それが榎木津に自分を如何見せたいかの証左で、顔を逸らした。
「とんと連絡がなくて、連絡が付かなくて、久しぶりだな」
寂しかったや会いたかったなどの文言はなかった。無かったが、関口は頭を振ると榎木津の柔らかな脣に自分の瘡ついた脣を押し当てた。

彼の寝台で目を覚ますことになった。朝の白い光の中で榎木津の金の粉を散らしたような睫毛を見ながら、関口は自分の浅ましさを呪いながらも、殆ど音になっていない声で告げた。

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